今回は何度か出てきた「エイジング」について、もう少し詳しくご説明させていただきます。


コーヒー豆は、焙煎されるとその風味がゆっくりと熟成され、その変化「エイジング」を楽しむことができます。

熟成による風味の変化の過程は、

● 焙煎当日から3日後

とてもクリアーで、苦味・酸味・甘み・コク・個性が独立して感じられます。
その半面、風味にやや堅さを感じ、全体的にフラットな印象を受けます。ロースト時に発生したガスを多く含み、ドリップの際に大きく膨らみますが、お湯とのなじみが弱い為、コーヒーの濃度が少し薄くなりやすい傾向があります。 ライトですっきりとしたテイストなので、このタイミングがお好きな方も多くいらっしゃいます。

● 3日~10日後

コーヒーの苦味・酸味・甘み・コク・個性が調和しはじめます。お湯なじみも良くなり、コーヒー豆の持つ風味の全体像が見えてきます。特に、甘み・コク・個性が調和した「旨み」が感じられるようになります。
コーヒー豆も新鮮なので、テイストにもフレッシュ感があり余韻にも爽快感を感じられます。
コクや濃さを出したい時は、ゆっくり抽出します。早すぎると酸味や苦味が目立ちます。これを利用して、お好みのテイストに調節することもできるので、試してみてください。

● 10日~20日後

この時期に達した豆は、香りは甘く豊潤さを増し、舌触りのよいコク、マイルドで心地よい苦みを感じられ、焙煎直後と比べて大きな差が出てきます。
抽出時の膨らみ方はだいぶ弱まり、お湯の投入も少し慎重になります。抽出を上手に出来ると、この熟成されたおいしさを引き出すことができます。
お店で提供するドリップコーヒーは、このぐらい寝かせたコーヒー豆を使用しています。

● 20日~1ヶ月

この時期の風味は、くだものの表現を借りると「完熟」。風味は複雑にして繊細にまとまり、全体的にやわらかくどっしりと太い余韻を楽しむことができます。
抽出時は、蒸らしにそれほど時間をかける必要もなくお湯になじみ、コーヒー豆の持っていたポテンシャルがすべて抽出できます。
しかし、ガスが抜けきったまったく膨らまないコーヒー豆の淹れ辛さはマックス。この時期のコーヒー豆の賛否が分かれる理由の一つだと思います。コツは中心にお湯を注ぎながら、水面張力を意識して全体にお湯がいきわたるイメージで入れていきます。


この「エイジング」は、前にお話ししている保存方法を実践していただく事で楽しむことができます。粉にして購入した場合は、ガスは2日と経たず抜けてしまいます。エイジングも少し早く進むと思います。
また、「エイジング」終わりを賞味期限と考えていただくと、飲み頃のコーヒー豆を無駄にせず楽しむ事ができると思います。
どうぞお試しください。

次回は、ハンドドリップのコーヒー豆の量についてです。どうぞお楽しみに!