今回は、「蒸らし」についてのお話です。

コーヒーをペーパードリップやネルドリップなど、自然の重力に従って抽出液を落とす淹れ方では、この「蒸らし」の良し悪しでほぼ味が決まると思っています。

特にスペシャルティコーヒーの様に、個性豊かなコーヒー豆は影響が出ます。

当店流ではございますが、参考にしていただきこちらをご覧になったお客様の毎日のコーヒーがおいしくなれば幸いでございます。

では、当店流の「蒸らし」のご説明です。

当店で気を付けているるポイントは次の4点です。

1.高めの温度

2.豆全体がヒタヒタにつかるお湯の量
(少しサーバに落ちるぐらい)

3.時間をかけすぎない

4.蒸らしが終わる瞬間を見逃さない

このの4点です。

では、それぞれのポイント について詳しくご説明します。

【1.高めの温度 】
正確には、「高めの温度を維持する」ですが、こうする事でコーヒー豆の持つ甘みやコク、香りなどの旨み成分が溶けだしやすくなります。
また、一気に高い温度に温めることでスピーディーに蒸らしが完了するため、コーヒー豆がふっくらした状態をキープできその後のお湯の投入がしやすくなります。
仮に、時間がかかると温度が下がり、表面が乾き自重で踏み固められ、全体にお湯が行き届きにくく抽出ムラがでて、味が薄かったり苦味や雑味ばかりが目立つコーヒーになっていしまいます。

【2.豆全体がヒタヒタにつかるお湯の量 】
多めのお湯で蒸らす利点は、ムラが出ない事です。
少なかったり、ギリギリの量だとお湯が行き届かない事があります。
また、少ないと蒸らし中に温度が冷めやすく、はっきりしない味になりやすくなります。
焙煎したての新鮮な豆だと、蒸らし中にガスが外に出きらず勢いよく吹き出し淹れずらい経験をされた方もいるのではないかと思います。多めに入れると蒸らし後の投入がしやすいのでお試しください。
その多めと言うのは、目安として豆の量が13gだったらその約2.5倍32.5g(㏄)前後のお湯を入れてみてください。スケールを使わない方は、少しサーバーに抽出液が溜まるくらいを目安にしてください。こうする事で、一気にコーヒー豆が温められ高い温度をキープして蒸らしを完了する事が出来ます。

【3.時間をかけすぎない 】
正確には、豆の状態に合わせて適正な時間をかけて蒸らすです。
豆の状態とは、焙煎からどれくらいエイジングされているか?と言う事です。 焙煎直後のコーヒー豆ははお湯なじみが悪く、逆にエイジングがしっかりされ焙煎から2週間ぐらいたつとお湯なじみが良くなります。
この事からエイジングされた豆では、蒸らしの時間(抽出全体の時間も)は焙煎直後よりも少ない時間で完了する事が分かります。

【4.蒸らしが終わる瞬間を見逃さない 】
コーヒー豆にお湯を掛けると、気泡が表面にプツプツ出てきます。これはコーヒーのクレマと言われるものですが、はじめは勢いよく「プツプツ」とにぎやかですが、少し経つとこの「プツプツ」の勢いも弱くなり最後には止まります。
この瞬間を境に、コーヒー豆の表面が乾き始めます。

この境が、「蒸らしが終わる瞬間」です。

これに合わせてお湯を投入していくことで、豆の状態に合った適正な蒸らし時間を取る事ができ、無駄に蒸らしてしまうなどの抽出の失敗を防ぐことができます。

「蒸らし」のポイント
1.高めの温度
2.豆全体がヒタヒタにつかるお湯の量
3.時間をかけすぎない
4.蒸らしが終わる瞬間を見逃さない

コーヒーの良し悪しは、抽出の前半で決まるとも言われています。
おいしいコーヒーを抽出するための大切な「蒸らし」のポイント4点をマスターする事でコーヒーの味ブレも少なくなり、「味がしっかりしているのに飲みやすい」コーヒーを抽出する事に一歩近づけると思います。

意外と長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

ここからはドリッパーの素材についての余談です。
ドリッパーの材質は大きく分けて、樹脂製や金属製、陶器のタイプがございます。
コーヒースタンドなどプロショップは、特に樹脂製のタイプが多く使われています。これは、抽出前に温める必要が無く、冷めにくいという利点があるからです。

ご自宅で陶器のタイプを使われている場合は、アツアツになるまでドリッパーを温める必要があります。もしも淹れたてのコーヒーが、アツアツになっていなければドリッパーに熱を奪われおり、十分な「蒸らし」ができずコクも甘みも少ないコーヒーになっていると思われます。
次に金属製のタイプは、冬の時期は冷たくなりやすいので銅製の熱伝導率の高いタイプがベストです。しかし高価で耐久性や手入れの手間にも不安がございます。その他メッキやステンレス製などがございます。金属製は樹脂製と大差はないと思われますが、使用前にお湯をかけて温めておくとよいでしょう。